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第4章 移りゆく季節の中で～夏、悪い夢

午後になると宿泊客も到着した。善一が約束通りお客を廻してくれたおかげで良泉館は久しぶりに満室となった。従業員はてんてこ舞いだったが、みんな嬉しそうに働いている。希実と祐樹の顔からも自然と笑みがこぼれた。

ようやく一息ついたときには、もう21時を回っていた。善一は、お昼過ぎには引き上げたからもういない。祐樹は、一人事務所のソファで休んでいた。そこへ、

「疲れたあー」

首を回しながら希実が入ってきた。

「お疲れ様」

祐樹は、栄養ドリンクを飲みながら言った。希実も冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出すと、祐樹の前に腰を降ろした。

「こんなに旅館の仕事が大変だと思わなかった」

「そうだね。今までこんなにたくさんお客さんが来たことなかったもんね」

「うん。初めて旅館の仕事を知った気がする」

「まだまだ新米と言うわけだ」

「そうね、もっと勉強しなくちゃ」希実は、ドリンクの蓋を開けると、ゴクッと一口飲んだ。「これからが私たちの本当のスタートだね。がんばろうね、祐樹」

希実は、右手に持ったドリンクを掲げ、祐樹に向かって微笑んだ。明るい茶色の瞳が天井の灯りに反射し、きらめいていた。