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人妻愛人契約
第4章 移りゆく季節の中で~夏、悪い夢
それから祐樹は、仕事の合間を見つけては、アプリの作成に取り組むようになった。希実も良泉館の顔として、フロントに立ち、朝から晩まで忙しく働いている。充実した毎日を送る中、二人とも示し合わせたように、善一との愛人契約について口にすることはなかった。
もちろん、そのことはいつも祐樹の頭の中にある。しかし、いまさら希実と話したところで、どうなるものでもないし、心が重くなるだけだ。そう思って、あえて口に出すことはしなかった。おそらく希実も同じだったのだろう。
しかし、二人が避けていても2回目の夜はやってくる。最初の日のあと、善一は、次の日は希実に決めて欲しいと言ってきた。女性は身体の都合があるからというのが理由だった。希実は、万一のことがあったらいけないから念のためと言って安全日を善一に伝えていた。
その日が近づいてくると、希実は時折憂鬱な顔でカレンダーを見ては、ため息をつくようになった。そのやるせない姿に祐樹も気持ちが沈んでいくのを感じた。
そして当日――。5月らしい明るい朝だというのに希実は元気がなかった。それでも、いつも通り働き、21時に仕事を上がると、簡単に食事を済ませ、シャワーを浴びた。落ち着いた紺のワンピースを着て、化粧をする。そして、愛未が寝ているのを確認してから玄関へと向かった。
「愛未のこと、よろしく頼むね」
今にも泣きそうな顔をしている。
「わかってる」
祐樹も泣きそうになりながら言うと、行ってきます、と言って、希実は出かけていった。
もちろん、そのことはいつも祐樹の頭の中にある。しかし、いまさら希実と話したところで、どうなるものでもないし、心が重くなるだけだ。そう思って、あえて口に出すことはしなかった。おそらく希実も同じだったのだろう。
しかし、二人が避けていても2回目の夜はやってくる。最初の日のあと、善一は、次の日は希実に決めて欲しいと言ってきた。女性は身体の都合があるからというのが理由だった。希実は、万一のことがあったらいけないから念のためと言って安全日を善一に伝えていた。
その日が近づいてくると、希実は時折憂鬱な顔でカレンダーを見ては、ため息をつくようになった。そのやるせない姿に祐樹も気持ちが沈んでいくのを感じた。
そして当日――。5月らしい明るい朝だというのに希実は元気がなかった。それでも、いつも通り働き、21時に仕事を上がると、簡単に食事を済ませ、シャワーを浴びた。落ち着いた紺のワンピースを着て、化粧をする。そして、愛未が寝ているのを確認してから玄関へと向かった。
「愛未のこと、よろしく頼むね」
今にも泣きそうな顔をしている。
「わかってる」
祐樹も泣きそうになりながら言うと、行ってきます、と言って、希実は出かけていった。