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第5章 移りゆく季節の中で～秋、素足の魔女

「大変ですね」

「若い頃からの持病ですから、どうしようもありません。諦めてます。でも、いまみたいに出し切ったあとは、スッキリするんですよ。あまり長くは持ちませんがね」

そう言って、善一は、ガハハハと笑った。息もだいぶ整ってきた。

「深田さん、開発費用はどのくらいかかるでしょうか」

「それぞれの旅館のシステムを見てみないとわかりません。そのうえで見積もりをつくらないと」

「では、さっそく見積もりをお願いします。システム部の人間には協力するよう私から言っておきますから。少し値が張っても構いません、いいシステムを頼みますよ。来週またお会いしましょう」

「わかりました」

祐樹は、席を立って会議室から出ると、ほっと息をついた。善一との会合が無事終わったことに、やれやれと胸を撫でおろす。

それにしても三河屋グループのシステム統合となると大仕事だ。忙しくなる。帰って希実に伝えなければ―――。

祐樹は足取りも軽く、旅館組合のビルを後にした。

13時過ぎに希実は帰ってきた。14時には女将としてお客さんたちを玄関で出迎えなければいけない。希実は、そのまま母屋に着替えに戻った。それを追いかけながら、祐樹は、善一との会合の結果を伝えた。

「すごい！　よかったね！」

希実は喜んでくれたが、明るい茶色の瞳が、どこか悲しく沈んでいるように見える。祐樹は、それが気になった。