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絶対に許さないからね
第3章 母のワンピース
 うちから牧原の家まで、
電車を乗り継いで一時間半かかる。
銀ちゃんがいれば、
ぱーっと車で連れていってくれるけど、
そこはまあ仕方がない。
銀ちゃんと一緒に牧原の家を訪れるのは余計めんどくさい。

 母が若い男に狂って家庭が崩壊した、
という我が家の恥部を、銀ちゃんは知らない。
母と娘は仲がよいものだ、
と信じ込んでいる銀ちゃんにとって、
目も合わそうとしないわたしの態度は相当奇異に見えるらしい。

「詩子ー、はやく用意しなさい」

 詩子の部屋に向かって声をあげると、
かすかに、はーい、と返事が聞こえた。
喪服は着ていくか持っていくか朝まで迷って、
今朝の空を見て着ていくのは諦めた。
荷物が増えてしまうが仕方がない。
牧原の家につくころには汗だくになってしまう。
若かったころは夏大好きだったのに、
最近では熱気と湿度が体に堪える。

「ねえねえ、美香ちゃん」

 寝室に入ってきた詩子の恰好を見て呆れた。
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