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絶対に許さないからね
第3章 母のワンピース
 そろそろ家を出なければならない。
もう一度鞄の中を確認する。
財布とスマホ、香典袋、
化粧ポーチ、キーケース、
折りたたみの日傘、ハンディファン、
汗っかきの詩子のためのタオルハンカチ、
詩子に飲ませる麦茶が入ったサーモスの水筒。

「詩子、さっきはごめんね。
そろそろ行かなくちゃ」

 玄関でわたしと詩子の靴を用意していると、
ドアが開いて廊下を歩いてくる音が聞こえた。
行かない、と駄々を捏ねられなくてほっとする。
でも……

 拗ねた顔をしたままの詩子は、
母のワンピースではなく、
先にわたしが選んだブラウスとスカートでもなく、
自分で選んだTシャツとジーンズという恰好だった。
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