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絶対に許さないからね
第3章 母のワンピース
「ごめん、詩子……」
「美香ちゃん、嫌い……」
ヒステリックに叫ばれるより、
ぼそっと言われるほうが、
遥かにわたしに効く。
「今日、もうどこへも行かない」
べそをかきはじめた詩子の、
湿り気たっぷりの声。
小さくしゃくりあげているのが痛々しくて、
思わずもらい泣きしてしまいそうになる。
わたしはもう、負けを認めるしかなかった。
「わかったから。これ、着ていいから。
今日はどうしても行かなきゃいけないの。
おじいちゃんのためなの。お願い、詩子」
クローゼットからハンガーごとワンピースを取り出し、
もう頑なに受け取ろうとしない詩子に、
半ば押しつけるように持たせ、
わたしはわたしの用意を続けた。
どうしてこうなってしまうのだろう。
母が絡んでくると、うまくいかなくなることばかり。
歯車の歯がひとつ欠けてしまっているみたいに。
「美香ちゃん、嫌い……」
ヒステリックに叫ばれるより、
ぼそっと言われるほうが、
遥かにわたしに効く。
「今日、もうどこへも行かない」
べそをかきはじめた詩子の、
湿り気たっぷりの声。
小さくしゃくりあげているのが痛々しくて、
思わずもらい泣きしてしまいそうになる。
わたしはもう、負けを認めるしかなかった。
「わかったから。これ、着ていいから。
今日はどうしても行かなきゃいけないの。
おじいちゃんのためなの。お願い、詩子」
クローゼットからハンガーごとワンピースを取り出し、
もう頑なに受け取ろうとしない詩子に、
半ば押しつけるように持たせ、
わたしはわたしの用意を続けた。
どうしてこうなってしまうのだろう。
母が絡んでくると、うまくいかなくなることばかり。
歯車の歯がひとつ欠けてしまっているみたいに。