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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第10章 グラビアデビュー
ホテルに着いてロビーに向かおうとすると
浅香が付かず離れずの距離をとりながら
しっかりと圭子の後ろを付いてくる。
「浅香さん、打ち合わせに興味があるのかもしれませんけど、あなたは部外者だから追い出されるわよ」
「それはどうかな?
世の中なんて、どうにでもなるもんだよ」
そんなことを言いながら
ホテルの関係者から「いらっしゃいませ」と頭を下げられて「どうも~」なんて勝手知ったる知人の家に遊びにでも来たように、浅香は全く悪びれた様子も見せなかった。
「いらっしゃいませ
ご宿泊でございますか?当ホテルはチェックインが3時からとなっておりますが」
「あ、いえ、違うんです
週刊ヤングバカラ様と撮影の打ち合わせがあると呼び出されたものですから」
圭子がロビーの受付けで週刊誌の名前を口にすると「ヤンバカだって?!凄いじゃん!有名なグラビア雑誌だよ!」と隣から浅香がすっとんきょうな大声をあげたものだから、ロビーにいる人達が一斉にこちらを振り向いた。
「浅香さん!少しだけ口をつぐんでてもらえません?」
まるで圭子自身も世間知らずのおバカに思われそうで、たまらずに赤面した。ロビーの受付けの女性もコホンと小さな咳払いをしてご静粛にお願いしますねと言いたげだった。
「ヤングバカラ様でございますね
ええ、打ち合わせの件は承っております
7階の703号室でございますね
どうぞ右手のエレベーターをご利用くださいませ」
「ありがとうございます」
ロビーの人達の視線から逃れるように
圭子は急いでエレベーターに飛び乗った。
もちろん、お願いもしていないのに浅香も関係者のようにピタリと圭子に寄り添っていたのは言うまでもなかった。