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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第12章 嵐の夜
「どうして止めるんですか!」
「若い二人が惹かれあって愛し合ってるんです
今、飛び込んでどうしようっていうんですか?
圭子ちゃんに唾をつけたカメラマン助手にパンチの一つでもお見舞いしようというんですか?
それは野暮ってもんですよ」
「それはそうだけど…」
てっきり圭子は自分の女だと思っていた自分自身が滑稽に思えてきた。
遠回しに自分なりに圭子へ愛情を注いできたつもりだったのだが、これでは単なるピエロではないか。
「まあまあ、こんなときは呑んで忘れちまうに限るんですよ
さあさ、何もかも忘れて呑みましょうや」
グイッと彼に肩を抱かれて
後ろ髪を引かれる思いでドアから引き剥がされた。
ダイニングに向かうと
撮影隊のメンバーはおとなしく部屋に引きこもっているのか、それとも停電してしまいやることもなくふて寝しているのか誰も階下に降りてくる気配はなかった。
「おっ!バーボンがあるじゃないですか
未開封だけど開けてしまってもいいですよね?」
浅香が「どうぞ」と言うよりも先に
撮影隊のリーダーは手慣れた手付きでバーボンを開封した。
「どうです?撮影に同行して単なる撮影会とは違ってけっこうくたびれるもんでしょ?」
グラスにロックでバーボンを注いで
浅香の前に差し出しながら彼は撮影旅行の感想を浅香に求めた。
「そうですね…
もっとこう、なんと言うか単純な作業の連続だと思っていました」
「素人ならそう思いますよね…
でも、実際は撮影の天候の心配したり
モデルさんの体調を気遣ったり…
私もリーダーとして一通りの撮影が終わってやれやれですよ」
まあ、乾杯しましょうや
グラスを高々と掲げる彼のグラスに
「お疲れさまでした、乾杯!」
手にしたグラスを彼のグラスにカチンっと合わせて
琥珀色の液体を一気に喉に流し込んだ。