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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第13章 帰京
『仕事…失くなっちゃった…』
圭子は行く宛もなく
目的地もなく、ただひたすらに街をさ迷い続けた。
いつしか歩道には人があふれかえり、
外国人旅行者の団体も増えてきた。
ふとビルの隙間から
そびえ立つ東京スカイツリーの姿が見えた。
なるほど観光客が多いわけだ。
知らぬうちに浅草近くまで歩いてきたのかと思うと、急にヒールで歩き続けたかかとが痛いと意識し始めた。
『どこかで座って休憩しよう…』
カフェを探してキョロキョロしていると
「どうですか~!スカイツリーをバックに記念のお写真を撮りませんか~」と
聞き覚えのある声に気づいた。
なんと、声の主は撮影旅行で台風の夜に一夜を共にしたカメラマン助手の三枝 浩だった。
圭子の視線に気づいたのか、不意に彼と目が合ってしまった。
「あれえ?圭子ちゃん?圭子ちゃんだよね?」
多くの観光客がいるにも関わらず
彼は大きな声をあげて
恥ずかしくなるほどに腕を振って自分を強調した。
相手にせずに立ち去ろうかとも思ったが、
おそらく「ねえねえ、どこに行くの?」と後を追いかけて来そうな予感がしたので
それならばと圭子から浩に近づいていった。
「まさか、こんなとこで会えるなんて思ってもみなかったよ
LINEしてもずっと既読スルーだしさ、僕は、てっきり君にフラれたのかと思っていたよ」
そう、帰京の飛行機の中で
彼とはLINE交換を済ませていた。
何度もLINEをくれていたけれど
帰京すると彼の事をすっかり忘れてしまい
会いたいという気持ちも薄れていたのだ。