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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第13章 帰京
「sorryね、今日はもう店じまいだよ
アンダースタン?closeだよ、OK?」
写真を撮ってくれと並んでいた外国の旅行者を蹴散らすと、浩は急いでカメラをバッグにし舞い込んで、立ち去ろうとする圭子を引き留めた。
「ん?何だか元気がないねえ…
どうしたの?せっかく会えたと言うのにさ」
浮かぬ表情の圭子を見つめて
浩は怪訝そうな顔をした。
こんな男でも、気にかけてくれた事が嬉しくて
泣くまいと頑張っていた心の糸が切れた。
「わたし…わたし…」
そこから言葉が続かない。
涙がポロポロとこぼれた。
「お、おい!こんなところで泣くなよ!
いくら再会できて嬉しいとは言え泣く奴がいるかよ」
圭子の流した涙が再会を喜んでの感激の涙なのだと、浩は有頂天になった。
しかしながら、こんな雑踏で泣かれては痴話喧嘩して女を泣かした酷い男だと見られなくもない。
「とりあえずこっちに来な
すぐそこにバイト先の事務所があるからさ」
優しくされればされるほど
圭子は泣きじゃくってしまった。
「ちょっとごめんよ
通してくれ、おい、そこの中国人!写メを撮るんじゃねえよ!お前らにはプライバシーって言葉がないのかよ!」
群がる外国からの旅行者を押し退けて
浩は圭子の肩を抱いてすぐ近くのビルの中に連れ込んだ。
そのビルの一室に圭子と一緒に逃げ込むように入ると、事務所のおばさんが「何よ、もう店じまいしてきたの?これからが稼ぎ時だってのに!」と
浩を見るや否やカンカンに怒りだした。
「すまん!朝子さん!
今日のバイト代はいらないからさ」
顔の前でごめんなさいと手を合わせると
圭子に「さ、奥の部屋で少し落ち着けよ」と
もう逃がさないぞとばかりに
しっかりと腰に手を回して奥の部屋に連れ込んだ。