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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第13章 帰京
「あんたたち!人の事務所の応接室でセックスなんてしたら承知しないからね!」
ドアの向こうでは浩が朝子さんと呼んだ女性が金切り声を上げた。
「ったくもう!稼ぎ時に何やってんのよ!」
仕方無いわね、わたしが代わりに稼いでくるわ!と
彼女は浩が机の上に置いたカメラの入ったバッグを手にすると急ぎ足でビルから出ていった。
「お仕事中だったのにごめんなさい…」
「いいって、それよりも涙を拭きなよ」
彼はそう言って、ズボンのポケットからくしゃくしゃのハンカチを取り出して圭子に渡した。
男なのに、ちゃんとハンカチを持っているのねと
少しばかり感心したが
手にしたハンカチは何だか雑巾のような匂いがしたので「ありがとう」と突き返して、圭子は自分のバッグからハンカチを取り出した。
「最初はさあ…僕に会えて感激して泣いてるのかと思ったけど…どうやら、そうじゃないみたいだね」
せっかく取り出したハンカチを
再びくしゃくしゃに丸めてズボンの中に納めながら「訳を話してごらんよ」と話しかけた。
「わたしね…職を失っちゃったの…」
「えっ?何で?
グラビアアイドルとして前途洋々だろ?」
今回のギャラが振り込まれるのは数ヶ月先の事だし、後ろ楯の浅香さんが大手事務所のアイドルに乗り換えってしまったからには見放されたも同然だわと圭子は事情を彼に打ち明けた。
「ふぅ~ん…テレビ局の仕事もお払い箱とはキツいね」
それよりも、圭子ちゃん、腹が減ってるんじゃないのかい?
ラーメンでも喰うか?
すぐそこだからと、事務所を飛び出して
無理やり圭子を連れて歩きだした。