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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第15章 青天の霹靂
なんとか持ち合わせの金額で
タクシーは目的とする浅香家にたどり着いた。
料金を支払うと紙幣を全て失い
圭子の手元には小銭しか残らなかった。
もし万が一、浅香が圭子を見放したら
今夜は野宿するしかないと腹を決めた。
門扉の灯りを頼りに
それなりにメイクを直した。
完璧とは言い難く、室内の明るいところではメイクがつぎはぎだらけだろうけど、藁にもすがる思いでインターホンの呼び鈴を鳴らした。
『はい…どちら様でしょうか?』
すでにメイドの幸恵も就寝していたのだろう
とても眠そうな声がインターホンのスピーカーから流れた。
「夜分に申し訳ありません…
私、圭子です」
圭子という名を聞いて
例の撮影旅行にした女だとメイドの幸恵はピンときた。
『圭子さん?まあ、こんな深夜にどうなさったの?』
「すいません、失礼なのは重々承知の上です
どうしても浅香さんに…準さんにお会いしたいんです!」
こんな夜更けに失礼な女だわと
メイドの幸恵は圭子を追い返そうとしたが
あまりにも圭子の声が切羽詰まっていたので
『いいでしょ、お入りなさいな
でも、お坊っちゃまにお会いするのは翌朝にしてくださいな、今夜は私の部屋で泊まればいいわ』
こんな夜更けの訪問にも関わらず
メイドの幸恵は屋敷に招き入れてくれようとしていた。
その声は天女の声のようにありがたかった。