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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第16章 玉の輿
その夜、一家が夕食の席についているときに
久がフォークでワイングラスをチンと鳴らした。
妻の瑠璃子も息子の準も何事かと久に注目した。
「準…お前はいくつになった?」
「いやだなぁ、父さん、息子の年齢まで忘れてしまったのかい?
僕は見ての通り童顔だけど、とっくに三十路に足を突っ込んでいるよ」
「そうか…どうだ?そろそろ身を固めるつもりはないか?」
「嫁をもらえというのかい?
子犬や子猫をもらい受けるわけにはいかないんだよ、嫁に来てくださいと言って、はい、わかりましたと気軽に嫁になんか来てくれないんだよ」
母親の瑠璃子も二人の会話を嬉しそうに聞いていた。
子供好きの瑠璃子は早く孫をこの手に抱きたくて仕方なかった。
「ねえ、準、あなた、本当にいい人はいないの?」
「いいひと?」
「つまり、お付き合いをしている女性はいないのって聞いているのよ」
「そんな女なんかいないよ」
彼氏ならいるけどね
口には出さなかったものの
すでに準は身も心も彼のモノになっていた。
「それじゃあ決まりだな!
準、お前はメイドの圭子と所帯を持つんだ!」
久の唐突な宣言に
妻の瑠璃子も息子の準も目を白黒させて驚いた。
「け、圭子を妻に?」
「まあ!圭子さんを嫁に?」
瑠璃子も準も二人揃って驚きの声をあげた。
「圭子、こっちに来なさい」
主である久に呼びつけられて
圭子は慌てて厨房からダイニングルームに顔を覗かせた。
「この事はメイドの圭子も了承済みだ」
「まあ!いつの間にそんなお話を進めていらしたの?」
息子の将来の事でもあるのに
相談もなく縁談を進めていた夫の久を詰るようにキツイ口調で瑠璃子が不満そうに声を出した。