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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第16章 玉の輿
その夜、遅くに帰宅してきた夫の準は
いつもの陽気さなどこれっぽっちもなく、
この世の終わりかと言うほどに憔悴していた。
「あなた…いったいどうなさったの?」
圭子としても落ち込む準の姿を見るのは辛かったけれど、いつものように冷静沈着だと義父に抱かれた動揺を見透かされるのではないかとヒヤヒヤせずに済んだのは幸いだった。
準はいつものようにクィーンサイズのベッドで、圭子に背を向けている。
「ねえ、悩みがあるのなら話してよ
私たち夫婦じゃないの」
そう言いながら圭子は思いきって準の肩に手を置いた。
いつもならば「触らないでくれ!」と邪険に扱われるのだが、そうすることさえ億劫なようで
圭子のなすがままにされている。
この時とばかりに
圭子は思いきって準の背中に引っ付いてみた。
そのように体を密着されても拒もうとはしない。
久々に準の体温を頬に感じて
入籍して初めて圭子はわずかな幸せを感じた。
「フラれたんだ…」
唐突に準がポツリと呟いた。
「えっ?今なんて仰ったの?
フラれたとか?」
「僕の何がいけないっていうんだ!
あんなに彼を愛していたのにさ!
新しい若い彼氏が出来たからと言って
僕をアッサリと捨てちまったんだよ!」
クルっと寝返りを打って準は圭子と見つめあった。
その瞳からは涙が滝のように流れている。
「まあ!あなたを捨てるなんて…
あなたの素晴らしさを理解していなかったのね」
今なら、その唇に触れることが出来るかもしれない…
圭子は思い切って準に唇を寄せてキスをした。