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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第6章 浅香夫妻
不意にタバコの煙の臭いがした。
『おかしいわ…全館禁煙のホテルのはずなのに…』
夜の暗闇に目が慣れてくると
紫煙が隣の部屋からこちらに流れ込んでいるのに気づいた。
『バルコニーで喫煙しているんだわ!』
蛍の灯のように赤い明かりが夜の暗闇に光っていた。
『まあ!ルールを守らない方もいるのね!』
一言注意をしなきゃと
瑠璃子は部屋を出て、隣のルームの呼び鈴を押した。
カチャ…
現地語でよくわからなかったけど、
ニュアンスからして「どなた?」と問いかけているのだと理解した。
「ノースモーキングよ!」
そう言ってタバコを吸うジェスチャーをして
顔の前で腕をクロスして✕印を示してやった。
「☆△○✕…」
早口で何かを言っているが
瑠璃子には理解できない。
でも、申し訳ないという意味合いの事だと彼の表情が物語っていた。
「わかってくださればいいんですのよ
お互いに滞在中は気分よく過ごしたいですものね」
「サンキュー」と礼を述べて立ち去ろうとしたその時、
ドアがガバッと開いて中の男が瑠璃子の腕を取った。
『えっ?何?』
戸惑う瑠璃子を尻目に
その男は力任せに瑠璃子を部屋に引きずり込んだ。
「ちょっと!失礼じゃありませんこと?」
部屋から立ち去ろうとすると
男がドアの前に立ちはだかって部屋から出ようとするのを阻止した。