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♥crack an APPLE♥
第3章 優しさで愛する人を救うことなどできない
水望の瞳が揺らぐ。
ごまかすことなどできない。
射抜くように自分を見つめてくる炬に、水望は膝の上で拳を握る。
顔を上げ、その強い眼光に負けないように真っ直ぐに見つめ返し、言う。
「――守りたい人がいるからです」
ドク、と心臓が高鳴るのを感じた。
炬のタバコを持つ手がぴくりと動く。
その些細な彼の動きにさえ、水望は敏感に反応してしまう。
「……ほう。守りたいから魔物を祓う術を知りたいって……おまえはそう言うんだな」
「……そうです」
水望の頬を、ツ、と冷や汗が伝う。
炬の表情は依然として変わらない。
むしろその瞳は水望への難色を示す色が強まっているようにすら感じた。
重苦しい空気を、炬が静かに割る。
ふう。
もう一度煙を吐くと、炬は咳払いをした。
水望は大袈裟なくらいにびくりと身じろぐ。
「――だめだ。おまえにこれ以上の退魔術を教えることはできない」
「……!? どうしてですか……!?」
「おまえにその資格がないからだよ」
「な……」
ガツ、と頭を殴られたかのような衝撃がはしる。
資格がない……。
炬は今まで自分を否定したことなど、一度もなかったのに。
なぜ、なぜ……今こんなことを彼は言ったのか。
どうして自分はこれ以上を求めてはいけないのか。
頭の中が混沌としてゆく。
水望は何も言い返すことができずに、黙り込むことしかできなかった。