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♥crack an APPLE♥
第5章 それが糧とならないように祈りましょう
「私、とある事情で村の皆さんから嫌われているんです。だから時々私のもとを訪ねてきてくれる兄だけが私と普通に接してくれる人でした。両親は昔亡くなってしまったので」
「……今は一人で暮らしているんだ?」
「はい。話す相手といえば、本当に兄くらいで……市場にお買いものに行っても村の人は目も合わせてくれないんですよね。売ってもらえないことだってあります。……だから、私は本当に兄だけが頼りだった。……でも」
巴月は俯く。
しかしその表情に大きな陰りはない。
本当に、全てを諦めてしまっている。
そんな表情だった。
穏やかに笑っていた。
「兄が、先日亡くなってしまったんです」
「……じゃあ」
「はい。もう私を好きって言ってくれる人は、誰もいないんです」
どうしてそんなことを笑って言えるのだろう。
水望は彼女の顔をみてずっとそんなことを考えていた。
その「嫌われる理由」とやらがよっぽどのことなのだろうか。
ただ、「とある事情」とわざわざ彼女がぼかして言ったことを敢えてきくというのはどうにも大人気ない気がする。
……と水望が考えていることが、顔にでてしまったのだろうか。
巴月は笑って言う。
「……気になりますか? どうして私が村の皆さんから嫌われているのか」
「……いいよ、言いたくないのなら言わなくていい。君の心の傷をわざわざ抉りたいなんて思わない」
「いえ……どちらかといえば聞いて欲しいんです。水望さんには、なんとなく。全部言いたい気分です」
「……今は一人で暮らしているんだ?」
「はい。話す相手といえば、本当に兄くらいで……市場にお買いものに行っても村の人は目も合わせてくれないんですよね。売ってもらえないことだってあります。……だから、私は本当に兄だけが頼りだった。……でも」
巴月は俯く。
しかしその表情に大きな陰りはない。
本当に、全てを諦めてしまっている。
そんな表情だった。
穏やかに笑っていた。
「兄が、先日亡くなってしまったんです」
「……じゃあ」
「はい。もう私を好きって言ってくれる人は、誰もいないんです」
どうしてそんなことを笑って言えるのだろう。
水望は彼女の顔をみてずっとそんなことを考えていた。
その「嫌われる理由」とやらがよっぽどのことなのだろうか。
ただ、「とある事情」とわざわざ彼女がぼかして言ったことを敢えてきくというのはどうにも大人気ない気がする。
……と水望が考えていることが、顔にでてしまったのだろうか。
巴月は笑って言う。
「……気になりますか? どうして私が村の皆さんから嫌われているのか」
「……いいよ、言いたくないのなら言わなくていい。君の心の傷をわざわざ抉りたいなんて思わない」
「いえ……どちらかといえば聞いて欲しいんです。水望さんには、なんとなく。全部言いたい気分です」