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♥crack an APPLE♥
第5章 それが糧とならないように祈りましょう
「……私がこうして孤独になったのは……はっきり言って兄のせいです。正直私も魔物と子供をつくるなんてこと賛成できなかった。……でも、私は兄を嫌うことはできませんでした。……兄しか、私を愛してくれる人がいなかったから」

「……でもそのお兄さんが……」

「はい……死にました。……子供をつくった……相手の雌の魔物に食い殺されました」

「……、」



思わず水望は口を手で覆う。

「うわ」、というのが正直な感想だ。

まるでカマキリみたいだ、なんて思ったことは絶対に口にできなかった。

あまりにも自分とは無縁の話すぎて、現実的にとらえられなかった。



周囲の目を無視して魔物と子供をつくった挙句食い殺されて、そして残ったのが彼女の不幸か。

水望は彼女にかける言葉がみつからなかった。

思った以上に悲惨な彼女の境遇を、頭の中で処理しきれなかったのかもしれない。



はやく、何かを言ってなげなければ。

彼女は、僕に何か慰めのようなものを求めているんだ。



「私に生きている意味なんてあるのかなって。もう目に映る世界が真っ暗で、何も見えないっていうのに」



「そんなことない」。

そんな陳腐な言葉を口にしようとしてしまうほどに、水望の頭には何も浮かんでこなかった。

中身のない軽い慰めほど、彼女を傷つけるものはないというのに。




だけど。

それを口走りそうになった水望よりも先に、巴月は言った。




「……でも。なんででしょう。水望さんが助けてくれたあの時……すごく世界が輝いて見えた」

「……え?」

「座り込んだ私に手を差し伸べてくれたあなたが……とても眩しかった」




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