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♥crack an APPLE♥
第5章 それが糧とならないように祈りましょう
***



それは、はじめての感覚だった。



決して、家族が冷たかったわけではない。

親としての務めはちゃんと果たしていたと思う。

しかし、必要に互いに接触はしない。

そんな家族だった。



だから。



「あれ、巴月料理上手なんだね」

「……一人で、暮らしてきたし……それなりに生活するための手段は……」

「そっか。じゃあこれからは僕のためにつくってくれる?」

「で、でも……お口に合うか……」

「うーん? でもすごくいい匂いするよ? 美味しそう」



スープをつくる巴月を覗き込むように、水望が隣にたつ。

少しは料理できると言ってみればじゃあ作って欲しいと言われ、こうして作ってみれば。

一人でつくっている時には全く感じなかったものが、心の中でそわそわと動いている。



穏やかに、隣で笑っている彼。

じっと見られているのだと思うと、集中できない。

なぜかドキドキしてしまって、顔をあげられなかった。



はじめての感覚だった。



絶対に、一人でいるときには感じない、これが。

ふわふわと、どこか温かくなってくるような不思議な感覚が。


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