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♥crack an APPLE♥
第5章 それが糧とならないように祈りましょう
出来上がったスープを器に入れて、少しだけ焼いたパンをお皿に乗せて。

テーブルに持っていくと、水望が笑ってくれる。



一人暮らし用の小さなテーブルは、向かい合うと少し距離が近いように思われる。



「じゃあ、いただこうか」

「あ、はい……あの、そんなに期待しないでくださいね! ほんとに、無難な味しかしませんから……」

「ううん。巴月が作ってくれたってだけで僕は嬉しいから」

「……う、」



水望の瞳が細められる。

なぜか巴月は目をそらしてしまった。

真っ直ぐに彼を見られない。

なんだろう、この、こそばゆいというか……



「……すごく美味しい」

「……ほんと、ですか……?」

「うん。巴月がこれからもこうしてご飯つくってくれるなんて僕は幸せ者かもしれないね」

「……っ」



これからも。

そうか、これからもこの人にこうしてご飯つくってあげられるのか。

なんでだろう。

ご飯をつくるのなんて、今まですごく退屈な作業だったのに、楽しみにしている自分がいる。



こぼれていく。

自分の知らない体のどこかで生まれた、笑顔が勝手にこぼれていく。



「水望さん……」

「ん?」

「嬉しい……です。私、水望さんに美味しいって言ってもらえて、すごく嬉しい……!」



心のなかをじわじわと温めてゆくこれは、……


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