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♥crack an APPLE♥
第5章 それが糧とならないように祈りましょう
「あの……私、水望さんに出会えてよかったです」
「……どうしたの、急に」
「だって……水望さんといると、なにもかもがきらきらして見えるんです。今までそんなことなかった。もしかしたら私、このままずっと意味もなくまわりのもの全部憎んでいたかもしれません」
「……そっか」
水望が指を動かして、巴月の髪をくるくると弄ぶ。
そして頭に手のひらを添えて静かに自分の方へ引き寄せると、目を閉じ、巴月に寄り添った。
「……僕も……君に逢えてよかった」
どくん、と心臓が跳ねた。
……そんなことを言われたのは、初めてだ。
私はただ……あの時の水望さんが忘れられなくて。
眩しくて、眩しくて。
私が生きてきた世界は真っ暗だったから、それを水望さんが照らしてくるような、そんな気がして。
貴方に逢えたから、もっとこの世界を生きたいってそう思えた。
今、初めて、私が存在することを喜んでもらえた。
ずっとずっと、今まで疎まれ続けてきたから、こんなことを言われたのは初めてだった。
「……巴月?」
「はい……?」
「なんで泣いてるの?」
「えっ……」