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♥crack an APPLE♥
第5章 それが糧とならないように祈りましょう
涙。
なんで。
どこも痛くなんてない。
悲しいことなんてなにもない。
そう、私はいま、すごく幸せ。
水望さんの側にいられて、すごく幸せ。
ああ、じゃあもしかしてこの涙は。
いつか、聞いたことがある、あの涙。
私には、無縁だと思っていた……
「嬉しくて……泣いているんです」
「……!」
「こんな風に誰かに大切にされたの初めてで……私、今本当に幸せで……」
胸がいっぱいなんです。
昔の私が今の私を見たらどう思うでしょう。
信じられないって、そんな顔をするんでしょうか。
ねえ、待っていて。
貴女はね、そのまま不幸なんかで死んだりしない。
幸せに、なれるんだよ。
誰にも見られないように泣いていた。
全部諦めていた。
そんな昔の私に、こうして幸せな未来が待っているんだよって、そう言えるようになったこと。
それが、嬉しかったのかもしれない。