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わたしの彼は 甘くて強引
第10章 大切な人

「…でも知らなかったわ……まさか栄作さんがお父さんと友達だったなんて」
そういうことなら…
わたしが先輩と会って、こうしていつも助けて貰っていることには、何かしら運命めいたものを感じてしまう。
あの広い大学
溢れかえった学生の中で、学年も違うわたしたちが出逢ったこと……
「……すごい偶然」
こんなことってあるんだなぁ
「――…柚子、俺は帰るぞ」
柚子が感傷に浸っていると、入り口に突っ立っていた匠が回れ右をしてドアノブに手をかけた。
「…あ!…ちょっと待って!」
ドアを開けもう外に出た匠の背中に呼び掛けながら、柚子は父親に振り返った。
「お父さん、いつまでこっちにいるの?」
「…今日は2階に泊まらせて貰って、明日には帰るぞ。母さんが帰って来るからな」
「そう…」
ならせっかく来てくれたのに、ゆっくりする時間はないのね…
「気にするな、父さんはお前の顔を見にきただけだ」
「うん…じゃあね。夏になったらまた帰るからね」
父親が頷いたのを確認して、柚子は急いで匠の後を追っていった。

