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血ダマリ美青年の狂気愛
第1章 白い部屋の少女

ピピッ…とロックが解除された音がなり、防音仕様の鋼製ドアがスライドして開いた。

「あ…!」

その瞬間、少女は両手で口元をおおって数歩後ずさる。

最初に目に飛び込んできたのは──血溜まりの惨状だった。

無色の世界に…そこだけが鮮やかに毒々しく浮かび上がる。さらに彼女が鼻を覆ったほどの、生々しい匂いが。


「──…見つけた」


「……!?」


そんなドアの向こう側には、たったひとり、見知らぬ青年が立っていた。

大人の男になりたての、まだ華奢さが残る高い背丈。

薄手のタートルネックにジャケットを羽織り、ジャケットと同じ色味のパンツ姿で、革靴を履いている。

一見、育ちの良さそうな…無害な服装だが、ジャケットの袖から半身にかけて返り血をまとっているせいで、台無しだった。

ほんのりと白いミルクティーベージュの髪は、前髪が長くて、隙間から片目だけをわずかに覗かせている。

その目は少女を真っ直ぐ射抜いていた。

まるで獲物を狙う爬虫類のように大きな瞳だった。

少女はその見知らぬ相手を前にして、心が不安定になってくるのを感じていた。

「だ……誰ですか……!?」

「……」

勇気を出して声を発したが、返事はない。

代わりに青年は、手に持つナイフをくるくると回しながら部屋の中へ入ってきた。

首から下がった十字架のネックレスが左右に揺れて

靴の裏が床をふむたび…べちゃりと生々しい音がする。

“ 殺される……っ ”

逃げ出したいと思った足は上手く動いてくれなかった。


青年は彼女の目の前で立ち止まり、腰をおって身体をかがめる。

「ひ…っ」

「……。……ん?ああ、壊れてたか」

ふいに何かに気付いた顔で、片耳に付けていた補助機を取り外した。

「悪いな、俺は耳が遠い──で?なんて言った?」

壊れた補助機を後ろに投げて、怯えて縮こまる彼女の顔を覗き込んだ。


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