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血ダマリ美青年の狂気愛
第1章 白い部屋の少女
補助機が床に落ちた時に大きな音が鳴って、それにも彼女は怯えた。
「あー悪い悪い。" あんたは " 音に敏感なんだっけ」
「…っ」
「目はいいのか?鼻はどうなんだ?」
「あ、あなたは……!?誰?」
どうみても危険な男なのに、思いのほか気さくに話しかけてくるから戸惑う。
けれど間違いなく、彼はいつもの研究員たちとは違うのだ。その研究員は、ドアの向こうで血だらけで倒れているから。
「…俺か?…俺のコト聞いてどうするつもりだ。こんな状況で」
軽薄な笑みを浮かべて顔を近付けてくる。…殺す前に試しているのかもしれない。
「まぁ、俺はあんたに興味あるけどね。名前でも聞いてやろうか」
「名前っ……ない」
「は?あんたもかよ」
「……」
「……、それは、そうか」
近くで見ると、彼の顔はとても整っているとわかった。スっと高い鼻…形のいい唇と、長い睫毛。少しだけ愛嬌も感じるのは、やっぱり目が大きいからか。
色素の薄い瞳に……吸い込まれそうになる。
“ やっぱりヘビ、みたい。…あれ?ヘビって何だったかしら ”
この状況で相手の顔なんて観察してしまっている少女も、感覚が普通とはズレている。
どうしていいか迷っている。
大声で助けを呼ぶか、泣いて命乞いをするかを選ぶべきなのだが、この部屋で何年も閉じ込められていた無知な彼女はそこまで考えが及ばなかった。
だから、小さな身体を震わせるだけだ。
「………ぁっ」
するとふいに、青年に手首を掴まれた。
少女が驚くと、彼は無言で、二の腕まで手を滑らせてくる。
冷たい彼の指に、生温かい血液を塗り広げるように触れられる…。
「…っ…あ、あ、……あ」
ピクッ
ノースリーブのワンピースでは彼の手を遮れず、二の腕の内側の、皮膚が柔らかいところも擽るように触られた。
「あっ…や……!」
「……」
くすぐったさに手を引いたが、反対に腰を引き寄せられた。
「離してくださ……んっ」
少女は目を見開く。
「んんっ…!?」
突然、青年に口付けられたのだ。
思わず声をあげようとした唇を、角度を変えてまた塞がれる。彼女にとって初めての口付けだった。何も知らない彼女は…その行為の意味すらわからなかったろう。