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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第8章 先斗町のお茶屋

大嶋が料亭の仲居を呼んで、
新聞紙を持って来させて。

舞妓さんが適当に
感覚を開いて新聞紙を3枚
畳の上に並べて行く。

『ほな…陣取りしますぇ…』

舞妓さんが2人ずつ1枚の
新聞の上に乗って見せてくれて。
陣取りのルールを私に
実演して見せてくれるらしい。

じゃんけんをして負けた方が
乗っている新聞紙を半分に折って
その上に乗るようだった。
負ければ負ける程…スペースが
小さくなって最後まで…
新聞の上に乗って居られた
ペアの勝利…になるのだそうだ…。

『俺…これ…得意やねん…』

『そうでっしゃろ…?
神室寺の旦那はん…と、
うちも…組みたかったわぁ~』

どうやら…舞妓さんの中でも
直哉様は…この遊びが得意らしくて
その界隈では有名なのだそうで…。

舞妓さんのデモンストレーションの後に
4組に分かれて…陣取り合戦が
始まった…訳なのだが…。

ある程度の…足場の狭さになると、
お互いの…身体をかなり密着させないと。

当然…そのスペースには…
立って居られない…訳で…。

お互いの身体を…ピッタリと
押し付け合う恰好…になる。

直哉様の…着物に焚き染められている
伽羅の香りが……鼻をくすぐって来る。

『そろそろ…足元狭ぅなってったなぁ…』

直哉が…この陣取りが…得意と
自慢げに言っていた理由を
私はこの後…知らされることになる。

じゃんけんに…負けて…、
今の足場が…半分のサイズに…。

もう…詰んだんじゃ…っと
そんな風に一花が
今のサイズの半分になった
新聞紙の陣地を見ていると。

人一人が足をくっつけて
やっと立てる位…しか無いのに。

隣の直哉は…涼しい顔をしている。

『そんな顔せんでも大丈夫やって、
こんなん…まだまだ余裕やん』


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