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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉
「お点前…頂戴します…」
と…つい目の前の…茶碗を見て
昔から染みついた…癖が出つつあったが。
ここはお茶の席…ではないので…。
そんな飲み方をしなくてもいいはずだ。
『そう言えば…着付けも
自分で出来るんやったな。
……もしかして…自分…、
お茶も…習ろとったんかいな?』
「はい…自分で…点てられる位には…」
一花の言葉に驚いていたのは
向い合わせに座って居る直哉ではなく、
部屋に案内してくれた仲居の方で。
「あの…玄関のお花は…
古流の三才型でしょうか…?
大胆で…高さのある桜の活け方で…」
『あら……、
びっくりして…しまいました…。
まだ…お若いお嬢さんですのに…、
お茶もお花も…なさっておられて…
私が…同じ頃は…、自分で
浴衣も着れませんでしたので…』
直哉が仲居に下がる様に合図して、
部屋に2人きりになると…。
『で?いつまで…お茶やら
お花やらの…習い事しとったん?』
「え…、あ…、私が…
高校を…卒業する
前日…まで……ですが……。
私の…荷物の中に…
お免状も……持って来て居るのですが…」
何故か向かい側に座って居る
直哉の顔がしかめっ面になっていて。
『自分…そう言う事はなぁ…
もっと…はよ言いいや……。
言うてくれたら…ちゃんと…
習い事の1つ2つ…習わせたんのに…』
「あ、あの…良いんですか?」
持っている免状について
直哉が機嫌悪そうにしながら尋ねて来たので。
自分が…今までのお稽古で
頂いて来た免状について説明すると。
『……習う所か…自分が
生徒取れる……やんけ…どぉーれも』
「いえいえ、私が…教えられるのは
精々…小学生とか…が…対象です…」
『まぁ…今は…それは…どうでもええわ。
とりあえず…温泉…入りに行こか…
これも…はよ…脱いで楽になりたいしな』
そう言って直哉がこっちの前で
着ている色紋付を脱ぎ始めて。