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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉

ここに来たのが…17時ごろで
今は…丁度18時前だ…。

食事の時間は…19時からの様で
その間にお風呂に入りに行こうと
直哉から言われた。

旅館の浴衣に袖を通すと。
直哉が嬉しそうにこちらを見ていて。

『ええな…温泉浴衣…』

夏祭りに着る色浴衣の比べたら
随分と…色味も地味な気がするし
昼間に着ていた振袖に比べれば
地味で質素な…感じのデザインなのだが…。

3階の客室から大浴場のある1階へと
ふたりで向かった。

『露天風呂付いとる部屋が多いし、
あんまり…いつもは…部屋に風呂あるし。
わざわざ大浴場に風呂に
入りに行こかってならんねんけどな…』

直哉のその話を聞いてると、
普段は…どちら様と一緒に
この宿を利用して…いて。

お部屋のお風呂だけでお済ませに
なれておられるのかと…も…
一花は若干の苛立ちを感じつつも…。

『後で、あっこで、
タダのアイス食べようや』

フロントの奥のロビースペースには
無料でコーヒーを飲んだりできるらしく
そこに無料のアイスもあるから
後でアイスを食べようと言って来て。

確かにお風呂上りのアイスって
身体が温もってるから
いつもよりも、美味しいもんな。

「で、でも…お夕飯…が」

『アイス1個食うたから言うても、
それぐらいで、腹一杯ならへんやろ?
それに…さっきあんなに声出してたし、
一花ちゃんも腹減っとるやろ?』

「……っ…!」

『顔…赤うなっとんで?
ホンマ…、ええ反応してくれんなぁ…』

する…っとこっちの腰に
手を伸ばして来ると
グイっと腰を抱いて引き寄せられる。

大浴場の案内看板に従って
ロビーを抜けていくと…、
こじんまりしているが…
綺麗にお手入れがされた
日本庭園を見ながら歩ける
渡り廊下に出て。

『ええ感じの庭やなぁ…』

「そうですね…凄い…素敵…なお庭で…」

日本庭園を見ながら
渡り廊下を進んで行くと。

純和風の枯山水の庭園の先に
ウッドデッキが設置されていて。
大きな…白いパラソルの様な
日よけが設置されている。
その日よけの下にはガーデンチェアが
2つ並んで設置されていて。
その横には大きめの丸い形の
リゾート風のラタンチェアが置かれていた。

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