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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉
『夏場やったらあそこも
湯上りにゆっくりすんの
気持ちが良さそうやなぁ』
その先の廊下の突き当りに
男女別々の大浴場の入口があって。
上がったらあのロビーで
待って置く様にと言われて。
男性用の大浴場の中に
入って行く直哉の姿を見送った。
一瞬…今なら…ここから外に出て、
自分の家に…戻れるかも…とか
そんな感じの事を…考えたりもしたけど。
どうせ…私の家の場所なんて
すぐに探し出せるだろうし…。
そうなれば、
…自分の家に迷惑が掛かるだけだ。
一花は…女性用の
大浴場のドアを開けて中に入った。
ドアを入って右側に壁付けの
ロッカーが設置されていて。
このロッカーがまた、
普通の銭湯とか大浴場にない
お洒落なロッカーだったんだけど。
蜂の巣…?ハニカム構造みたいな…
そんな…6角形だが8角形の
変わった形の大きめの
ベージュの扉のロッカーと、
普通の四角い濃い茶色の扉の
ロッカーが交互になっていた。
ロッカーは8ヶ所…。
脱衣場の左側のドレッサースペースは
ゆっくり座って支度が整えられそうだ。
アメニティもかなり充実してる。
髪の毛が濡れない様にまとめ上げて。
中に入ったら、大浴場と
呼ぶにはかなり小さい広さだった。
この温泉旅館は全室13室で
その半分に部屋に露天風呂があるから
多分わざわざここを使う人もしれてる。
その証拠に今…ここは、
私だけの貸し切り状態だ。
今は18時だから
早めの食事を希望の人は…
今頃ご夕食を食べている…のだろう。
洗い場は4ヶ所あって
高めの仕切りがそれぞれについている。
アメニティとして
備え付けもあるが
かなり入口の棚に種類が豊富な
シャンプーバーがあって
好きなシャンプーが使える様だ。
「あ、これ……使ってみたいな…」
髪の毛を洗う予定無かったのに
使ってみたかったシャンプーが
置いてあったので…ついつい
髪の毛を洗ってしまった。
だって…お高いシャンプーが
試せるチャンスだったんだもん…。