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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉

洗い場の後ろには内風呂があって。
その内風呂を抜けた先に
ちょっとした休憩所を挟んで。
その奥にこれまた4人ほどで
満員になりそうな小さめの露天風呂がある。

髪の毛を乾かさないとダメなので、
早めにお風呂は出ないとダメそうだけど。

折角の貸し切り状態なので、
ありがたく…一人には
広すぎる温泉を楽しませて貰って。

浴衣を着て肌を整えて、
ドライヤーをしていると。
仲居さんが…中に入って来て。

私の髪の毛を乾かすのを
手伝うと申し出て来たのだが。

多分戻りが遅いから…
様子を見て来る様に直哉様に
言われたんだろうなと……。

その人が…手伝ってくれたので
ドライヤー2台で髪を乾かして。

お手伝いをして貰ったお礼を言って、
大浴場を後にすると。
元来た道を戻って日が暮れて
雰囲気が変わった日本庭園に
見惚れながらロビーまで戻ると。

『なんや…てっきり…
風呂行かんと、そのまま
…逃げたんか思とったわ』

そう言う直哉の前には
空になったアイスが2つあって。

「お風呂に入ってただけです…ッ
って、それ…、そのアイスッ、
ハーゲンダッツッ…じゃないですか」

『自分も食べたいんやったら
そこから取って食べたらええやん』

「あの…でも…お夕飯の時間が…」

『そんなもん気にせんでええねん。
こういう所はなぁ…客が…ゆっくり
寛ぎに来る所やねんで?
食事の時間に少々遅れたって
時間忘れるほど…お客さんに
ゆっくりして貰えとる言う事やんか』

と…もっともたらしい感じに
そうは言って来るが、
要するにご飯の時間に遅刻する
大前提でこっちにアイスを食べろと
そう言ってる…みたいなので。

小さい冷凍庫に入ってる
ハーゲンダッツから1つを選んで
せめてもの救いなのは…
このハーゲンダッツがミニサイズって事か。

ストロベリー味のアイスを食べて。

『食べた?ほな、飯…食いに行こか…』



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