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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第2章 直哉様のお屋敷

にんまり…と…その顔が
不敵な笑みに変わって。

イヤだ…この笑顔…怖い…と
そうこっちが思って居ると。

『覚悟しいや?じきに…俺無しで
生きて行けへん…身体にしたるさかい』

「……私には…もう…、
帰るべき場所も、帰る家もないので…
あそこから…追い返された時点で、
直哉様…無しでは…、もう…
生きていけない…のですが?…」

『ホンマ…アホやな…アンタ。
そう言う意味ちゃうし…。
そんな…もん…、信じとったって
何も…アンタの事…助けてくれんのやで?』

信じる物は救われる…、

そんな物はないと…
真正面から…それを否定される。

私が…信じている物の全てを
この人は…否定して、

それを全て…自分にすり替えて行く…。

そんな風にして…、この人は…

人の心を…支配して行くのだろう。


もう…私は…、気付かぬ内に

この人に…囚われていたのだ。

彼の…支配…は…、

音も立てずに…、静かに…

でも…それでいて…着実に…

私を…取り囲んで…行くのだろう…。


ぐぅううう…と…自分の腹の虫が鳴いて。

そう言えば…お腹が空いていたのを

一花は思い出した。

今日は…朝ご飯を食べたきり…、

卒業式を終えて

京都の神室寺家に向かう途中に

お昼ご飯を…食べに連れて行ってくれたけど

出された食事は喉を通らなかった。


『腹の虫が…返事して来てんで?
まぁ…ええわ…、俺の事…
恨むんやったら恨んでもええで?
その為にも…、食うもん食うて、
しっかり…英気を養っとき…』

目の前に…豪華なお膳が運ばれて来て。
思わず…目を疑ってしまった。
彼の…為に用意された膳と…、
全く同じ物が…私の前に用意されたからだ。

「な…直哉様…これは…」

『自分、痩せとる割には
ええ乳しとるには…しとるけど、
全体的に痩せすぎやで?
俺が…もうちょっとふわっとして
抱き心地…ええ方がええねん。
せやないと、恥骨が刺さるんやって』

その恥骨が刺さるの意味が
私にはわからなかったのだけど。
要するに直哉様的には
私は痩せすぎと言う事なのだろう。

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