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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第14章 番外編 須磨シーワールド 前編

TVアンテナが内蔵されているから
こんな場所でも見られるのは
当然と言えば当然なのだが。

この…お屋敷は…そう言った物とは
一切遮断された環境にあるから。
この直哉様のお屋敷で、
それも座敷牢の中で
自分がテレビを見られる日が
来るなんて…と感動してしまっていて。

「凄い…テレビ…久しぶり……」

柳川丼を頂きながら、
お昼のニュースを見ていたら
今日オープンした兵庫県の
須磨シーワールドの様子が映し出されて。

オープンしたばかりのピカピカの
水族館ではイルカと人工の浜辺で
触れ合ったりとか、大迫力の
シャチのショーも楽しめるのだそうだ。

「わぁ…シャチ…だぁ…」

私が小さい頃に連れて行って貰った
愛知の名古屋水族館で
シャチを見た事があった…。
その時の記憶が蘇って来て。
しんみりとした気分になってしまって居た。

そう言えば…直哉様が…
私が頑張ったご褒美に何か欲しい物とか
行きたい場所とか…って言ってた…なって。

その須磨シーワールドの
リニューアルオープンのニュースを
一花は眺めながら…考えていた。

「でも…京都じゃないとダメって
言われちゃうかな……?」

まぁ…言うだけ…でも…
ここに行きたいと言ってみるかと
そんな程度に…思って居たのだが。

午後にも…お茶の先生が…
座敷牢の前に来てくれて…
格子越しに…ご指導を頂戴して。

お茶の先生には長い事
生徒さんに指導をして来たが
座敷牢に入れられている生徒さんは
私が初めてだと…休憩をしてる時に
そんな風に声を掛けて来て。

そう言えば…前に…
独立した離れがあるから
そこでも良いよとは…言っていたけど。

お花のお稽古は…お屋敷の母屋の
お部屋で…直哉様が居る日に受けてるけど。

直哉様が…私をここに閉じ込めるのは
私の為でもあると…前に言っていたけど
その理由を詳しくは聞いて居なくて。

この…3畳ほどの座敷牢の中も
思いの外快適な感じに整えられているので
私は不満らしい不満も無いのだが…。

いつもはその日に戻って来るけど
今日は泊まりのお仕事だから
ここで1晩…寝ないといけない訳で…。


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