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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第3章 『私』のトリカゴ

自分の先を歩いて移動する
直哉の後をついて、
広いお屋敷の中を移動する。

中庭を取り囲む様にして
建物が配置されていて…。

母屋…と繋がってはいるが、
別棟になっている離れの1つに
どうやら…直哉は向かっている様だった。

カコン……庭の池の隣に…、
設置されている鹿威しの音が聞こえた。

『おいで…こっちやで…』

「はい…」

直哉様が言い渡した…
ここでの私の仕事…と言うのは…。

この屋敷の家事をする事ではない。

お家の事とか…お仕事で…
疲れている直哉様を癒す事。

それだけだった。

直哉様に案内された
その離れの建物自体にも…
鍵を外から掛けてあるようで…。

それも…普通の鍵じゃなくて
扉に閂が…しっかりと掛けられて居て
閂にも…鍵がかけられている。

ぞく…っと…背中が震えた。

『もしかして…、
びっくりしてしもた?
安心してええで…、俺が出っときは
ここの戸は開けていくさかい』

そう…彼はそう言ったのだ、
この…外側から閂を掛けて
施錠されているこの扉は…
開いたままで自分は出掛けると。

『ここは…別に、開けとっても
閉めとっても、どっちでもええねん…』

そう…ボソッ…と私に聞こえない位の
そんな小さな声で直哉が言った。

ギギギギギィイイイ…、
普段から開いていないからなのか
重苦しい音を立てながら…
その…閂が掛かって居た扉が開いた。

小さな建物が見えていたが…、
その建物の中にあるのは…
何も無いハリボテの様な部屋で…。
地下へと続いている石造りの
階段が見えていた。

『元々は…この建物はな
冷蔵庫とか出来る前に
夏場に氷とか…貯蔵する場所…として
使われとった…みたいなんやけどな…』

昔の冷蔵庫は…氷を使って
中の食品を冷やしていたとは、
社会か何かの時に習った事がある。

時代を感じさせるような…、
そんな地下貯蔵庫……なのだろうが。

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