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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第3章 『私』のトリカゴ

……この細工がしてある箱は
箱根の伝統工芸品らしい。
地方で仕事がある度に…
こんな物を買って来るのだと…
私の様子を見に来てくれた
使用人の人が教えてくれた。

その箱と…どれぐらいの時間
格闘していたのか…分からないが…
1つ…どこかをスライドさせると、
別の場所がスライド出来る様になって
また…そこを…スライドさせたら
また…どこかがと…仕掛けを
幾つか…解くと…仕掛け箱が…
開くと言う仕組みの様だった…。

カパッ…と…最後の仕掛けを開くと、
箱の中には…瓶に入った
金平糖が入っていた…。

「これ…、金平糖…」

こんな大層な細工の箱に
入れる物が…金平糖なのかと…。
そんな風に…思いつつ…
あの…直哉様が…どんな顔をして
この箱の中にこれを入れたのかとか
そんな事を考えると…クスッ…と
その姿を思わず想像してしまって。

瓶の中には…小さな金平糖が
レインボーカラーの…
層になって入っていて。
一花がその瓶の蓋を取ると。
自分の手の平に…その小さな
カラフルな星の様な金平糖を出した。

なんだか…出したは…良い物の…。
食べてしまうのが…勿体ない様な
そんな…気がしてしまって…。

かと言って…一度、
自分の手の平に出してしまったので
瓶の中に戻すのは…戻すので
なんだか…忍びない感じがするし…。

もし…仕事を終えて…戻て来た
直哉が…金平糖の感想を求めて来た時に
食べてない…と答えるのは、
それはそれで…あの気難しい…主の
機嫌を損ねてしまいそうな…気がする。

「……顔に似合わず…、
意外と可愛い物好きなのかな…?」

金平糖…なんて…小学生の頃に
…食べた以来な…様な気がする。

コロコロと…自分の手の平の上の
カラフルな…小さい小粒の
金平糖を…落とさない様にしながら
一花が手の平の上で転がす。

「可愛い…」


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