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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第7章 直哉様とお出掛け

「いえ…何でも…ありません…」

自分の方を見ている、直哉の
視線から逃れる様に一花は
ふいっと自分の視線を逸らせて
軒先に並べられている金魚鉢に
自分の目を向けた。

『水泡眼…』

金魚鉢を見ている一花の
真後ろから直哉が金魚鉢を覗き込んで来て。

ゆったりと…その中に泳いでいる
金魚に視線を向けてそう言った。

「すいほう…がん?…」

ぷくっと…ほっぺたを
膨らませたみたいな顔をした、
ちょっとユニークな金魚…。

『中国の金魚らしいで?水泡眼。
可愛いい……顔しとるやろ?』

可愛い……と言うよりは
特徴的と言うかユニーク…
いや…見ようによっては可愛いと
言えなくも…ない…??と
その金魚鉢の中の水泡眼を見ながら
一花は考えていたのだが。

『ホラ…この顔、拗ねとる時の…、
一花ちゃんの顔に
よー、似とると思わへん?』

「似てませんっ…」

『そんな事あらへんて、
今の顔と似とるやん、ホラッ』

水泡眼と似てると言われて、
ムスッ…と…不貞腐れた顔を…
つい…してしまって居て。

ムスッした顔をしている自分の顔が
湾曲した金魚鉢の表面に映っていた。

「直哉様ッ…」

少し先の…睡蓮鉢を見ていた
直哉に声を掛けた。

『ん?怒っとたんとちゃうん?
なんや、もう、機嫌直ったん?』

「あのさっきの水泡眼って金魚に
…似てない…ことも…無いかもって…
ちょっと…思ったり…しました…」

『似てへんよ…冗談やしな。
あんなん…ただの金魚やん…。
せやけど、今日の…その…振袖…、
用意させて…良かったわ…。
ええもん…着ぃとっても…霞まへん…、
一花ちゃんは…
…ホンマに…べっぴんさんやなぁ…』


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