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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第8章 先斗町のお茶屋

直哉様が私にしか聞こえない様に
小さな声で耳元で囁いて来て。

『おたくさん…、随分…ええ…上等の
お着物…着せてもろとりますなぁ…。
うち…羨ましいわぁ…、
神室寺の旦那さんに…こないに…、
大事にしてもろて、可愛がってもろて…』

『ホンマやねぇ…、ええべべ
着してもろてはる…し、
それに…簪も…ええ簪やねぇ…』

『せやろ?…もっと…可愛い
可愛いって褒めたってぇや…。
ぜぇーんぶ…俺の見立てやで?
こう言う店も……お座敷遊びも
初めてやさかいに…、教えたってぇや』

じっと……向かい側で
大嶋の隣で酒を勧められている
舞妓さんの目線がこちらに
向けられているのに気が付いた。

その舞妓さんは…この中では
一番年上の落ち着いた雰囲気があって。
他の舞妓さんにはない、上品な
立ぶるまいでありながらも、
どこか…独特の雰囲気があり
女の私の目から見ても婀娜っぽい。

『玉虫色…の紅……注してもろて…
それも…、直哉はんからもろたんえ?』

その…穏やかな視線の中に
一瞬鋭い…物を感じて
自分が…あの…舞妓さんに…
一瞬けん制…された…のを感じた。

『…そうやったん?堪忍してや。
美鈴ちゃんも…、
紅…欲しかったかいな。
また…今度の…時…自分にもあげるわ…』

直哉がそう…サラっと言ったけど…。
何となく…あの…さっきの
お茶屋さんの二階の奥に…
一緒に行った事ある相手が…
この人…なんじゃないかって…
そんな風に思ってしまっていたのだけど。

程なくしてお料理が運ばれて来て。
老舗の料亭の…京都らしい…
美しい…盛り付けに…目を奪われる。

私が…運ばれて来た料理を
食べている姿を…じっと…
大嶋…が見ていて。
見られている…と思いながらも…
気にしない様にしていたのだが…。

『一花ちゃんを…
直哉君が側に置いてる理由が分かったよ。
食べ方が…とても…綺麗でお上品だねぇ…』



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