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ヒヤシンスの恋
第1章 菫のため息
…二十歳くらいだろうか。
その卵形の貌は透き通るようにきめ細やかに白く、まるで白絹のようだった。
さらさらと風に靡く美しい髪は亜麻色で、やや長めに白い額に揺れている。
美しい三日月型の眉、長く濃い睫毛の下、眦が切れ長に切れ上がった瞳はどこか艶めいて黒目勝ちに潤んでいる。
細い鼻梁は形良く、やや受け口でふっくらとした口唇は珊瑚色に色づいている。
すらりとした長い手足のしなやかな身体に身につけているのは、白い麻のシャツに紺色の緩めのワークパンツだ。
眩しいほどに白い素足には黒い革のサンダル…。
こんなラフな格好なのに、まるでお伽話の王子のように麗しく煌めきのオーラが漂う…。
…何…このひと…何…?
菫は畏怖すら感じた。
ひとは、余りに度を越した美貌を見ると、空怖くなるのだと初めて悟った。
「…あの…あの…」
衝撃の余り、言葉が出てこない菫を、青年はやや愉快そうに見遣った。
「僕の家に何の用?
あんた泥棒?空き巣?」
「ち、違います!!私…私…」
まずい!
このままだと泥棒と勘違いされて通報されてしまう!
でも…でもパンツのことは言いたくない!
こんな綺麗なひとにパンツを探しに来ましたなんて、口が裂けても言えないわ。
菫はパニックになりながら、けれど必死で知恵と言葉を絞り出す。
…咄嗟に脳裏に浮かんだのは…
「あの…!私、隣りに住む羽村です。
引越しのご挨拶に伺って…あと…あの…ピアノ教室の案内を見て…。
そ、そう!私、私、ピアノを習いたいんです!
それで…見学させていただこうとついお庭に入ってしまって…」
かなり苦しい言い訳だ。
けれど青年は疑う様子もなく、意外そうに長い睫毛を瞬いた。
その卵形の貌は透き通るようにきめ細やかに白く、まるで白絹のようだった。
さらさらと風に靡く美しい髪は亜麻色で、やや長めに白い額に揺れている。
美しい三日月型の眉、長く濃い睫毛の下、眦が切れ長に切れ上がった瞳はどこか艶めいて黒目勝ちに潤んでいる。
細い鼻梁は形良く、やや受け口でふっくらとした口唇は珊瑚色に色づいている。
すらりとした長い手足のしなやかな身体に身につけているのは、白い麻のシャツに紺色の緩めのワークパンツだ。
眩しいほどに白い素足には黒い革のサンダル…。
こんなラフな格好なのに、まるでお伽話の王子のように麗しく煌めきのオーラが漂う…。
…何…このひと…何…?
菫は畏怖すら感じた。
ひとは、余りに度を越した美貌を見ると、空怖くなるのだと初めて悟った。
「…あの…あの…」
衝撃の余り、言葉が出てこない菫を、青年はやや愉快そうに見遣った。
「僕の家に何の用?
あんた泥棒?空き巣?」
「ち、違います!!私…私…」
まずい!
このままだと泥棒と勘違いされて通報されてしまう!
でも…でもパンツのことは言いたくない!
こんな綺麗なひとにパンツを探しに来ましたなんて、口が裂けても言えないわ。
菫はパニックになりながら、けれど必死で知恵と言葉を絞り出す。
…咄嗟に脳裏に浮かんだのは…
「あの…!私、隣りに住む羽村です。
引越しのご挨拶に伺って…あと…あの…ピアノ教室の案内を見て…。
そ、そう!私、私、ピアノを習いたいんです!
それで…見学させていただこうとついお庭に入ってしまって…」
かなり苦しい言い訳だ。
けれど青年は疑う様子もなく、意外そうに長い睫毛を瞬いた。