この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
…それなら…
菫は躊躇いつつも勇気を出して口を開いた。
「…あの…私…愛の挨拶が弾きたいです」
「愛の挨拶?エルガーの?」
「…はい。
昔…私の友だちが発表会で弾いていて…すごく羨ましかったんです。
とても上手で…何より楽しそうに弾いていて…きらきら輝いて見えて…」
…今でも覚えている。
早苗ちゃんの着ていた空色のドレス…。
…すらりと背が高い早苗ちゃんに本当によく似合っていた。
私もママにおねだりして作ってもらったベビーピンクのドレスだっだけれど、早苗ちゃんのそれと比べると幼稚で野暮ったくみえた…。
早苗ちゃんへの拍手は誰よりも大きくて…もちろんそれは早苗ちゃんの実力だから当たり前なのだけれど、羨ましくて、切なくて…けれど、「愛の挨拶」の美しいメロディは今も胸に残っているのだった。
…早苗ちゃんはその後、国内外のピアノコンクールで優秀な成績を修め、世界最高峰のウィーン国立音楽大学に留学。
今ではウィーンフィルのバイオリニストと結婚し、大学でピアノ講師をしつつ子育てしているらしい。
…それに比べて、私は…。
何も成していない。
何の取り柄もない。
仕事も逃げ出すように辞めてしまった。
ただ、ぼんやりと中途半端に生きてきただけだ…。
菫は躊躇いつつも勇気を出して口を開いた。
「…あの…私…愛の挨拶が弾きたいです」
「愛の挨拶?エルガーの?」
「…はい。
昔…私の友だちが発表会で弾いていて…すごく羨ましかったんです。
とても上手で…何より楽しそうに弾いていて…きらきら輝いて見えて…」
…今でも覚えている。
早苗ちゃんの着ていた空色のドレス…。
…すらりと背が高い早苗ちゃんに本当によく似合っていた。
私もママにおねだりして作ってもらったベビーピンクのドレスだっだけれど、早苗ちゃんのそれと比べると幼稚で野暮ったくみえた…。
早苗ちゃんへの拍手は誰よりも大きくて…もちろんそれは早苗ちゃんの実力だから当たり前なのだけれど、羨ましくて、切なくて…けれど、「愛の挨拶」の美しいメロディは今も胸に残っているのだった。
…早苗ちゃんはその後、国内外のピアノコンクールで優秀な成績を修め、世界最高峰のウィーン国立音楽大学に留学。
今ではウィーンフィルのバイオリニストと結婚し、大学でピアノ講師をしつつ子育てしているらしい。
…それに比べて、私は…。
何も成していない。
何の取り柄もない。
仕事も逃げ出すように辞めてしまった。
ただ、ぼんやりと中途半端に生きてきただけだ…。