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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「…愛の挨拶ね…」

…綺麗な曲だよね…。
僕も大好きだ。

琥珀色の宝石のような瞳が煌めいた。

染布はそのまま白い手を鍵盤に載せた。

…ふわりと、音楽の妖精がこの美しい青年に降り立ったのかと菫は思った。

彼が奏でる音楽は、確かにあの「愛の挨拶」であった。
聴き慣れたあの有名なメロディ…
けれどそれは、今まで聴いたどのピアニストが弾いた曲とは全く違うものだった。

その透明感、瑞々しさ、詩情…そして、胸が掴まれるような甘く切ない哀調めいた音楽だった。

…こんな…こんな美しいピアノ…生まれて初めて…。
泣きたくなるような感動…。
こんな想いは何年振りだろう。
美しい音楽…
そして、非現実的な麗しい青年…
胸が苦しくなるような…それでいて甘美な痛み…。

…その感情に、名前をつけるとするならば…。

…それはきっと…

…きっと…


染布の奏でる最後の音が、初夏の夜の空気に静かに溶けた…。




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