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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「…エルガーはこの曲を当時生徒だったアリスに捧げた。
彼女へのプロポーズの曲なんだ」

弾き終わり、染布は静かに口を開いた。

「…アリスはエルガーより10歳近く歳上で、けれど二人は恋に落ちた。
結婚は周囲から相当反対されたらしい。
けれどエルガーは諦めなかった。
…その愛の証として、この曲を作曲しアリスに捧げたんだ」
美しい琥珀色の瞳は、どこか憂いを秘めた色で、中空を見つめる。
宝石みたいに美しい瞳…。
こんなに綺麗な瞳があるなんて…。


…知らなかった…。
「…そうなんですね…」

エルガーの愛の逸話。
…なんてドラマチック、なんて純粋な物語…。
菫は感動を覚える。

エルガーの物語と自分と染布をオーバーラップさせるのは厚かましい。
まだ自分と染布は出会ったばかりだし、第一、ひとまわり近く年上の自分を好きになってくれるはずが無い。
絶対にありえない。
…けれど、そんな世界もあるのだと、菫はうっとりする。

…そんな世界があるなんて…
今まで知らなかった…。



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