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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「…愛の挨拶。
いいじゃない?
弾けるよ。大丈夫」
とても優しい声だった。
胸がじんわり温まる…そんな声だった。
「本当ですか?」
「大丈夫。僕が弾けるようにしてあげる。
お隣さんのよしみでとびきり親切に優しく…ね」
その美しい琥珀色の瞳が菫を覗き込む。
「あ、ありがとうございます」
…やっぱりドキドキする。
「週何回レッスンにする?」
「…普通は何回ですか?」
「さあねえ…。
週1から…まあ音大受験とか専門的にやるならほぼ毎日だったけど…」
菫は躊躇いながら口を開く。
「…あのう…。
私、主人が3ヶ月後に帰国するんです。
それで内緒で愛の挨拶をマスターして、帰国したら聴かせたいんです。
主人をびっくりさせたくて…。
…でも、3ヶ月じゃあ厳しいですよね?」
『わあ!スミちゃん!すげえじゃん!上手いじゃん!
いつのまにこんな曲弾けるようになったの?』
亮一の驚く顔が見たい。
それは本当だった。
菫に意外な特技があることでびっくりさせたい。
菫を見る目が変わったりしたら、ちょっと嬉しい。
染布の白い貌が楽しげに輝く。
「へえ。それ、いいじゃん。
ミレイは良い奥さんなんだね」
無邪気に褒める染布に、少しだけがっかりする。
…そりゃ、そうよね。
当然の反応よね…。
何か期待する方がおかしいのだ。
「3ヶ月ね。
楽譜を少し易しくアレンジすれば無理じゃない。
その代わり、毎日練習してね。
まずは指がピアノに慣れることが大切だから。
右手と左手の練習をばらばらに。
教本貸してあげる」
「ありがとうございます!
はい。頑張ります!」
…あとは…
「ピアノはある?」
菫は首を振る。
実家にはあるが、ここにはない。
「ないので、買います」
染布がやや心配そうに綺麗な眉を寄せる。
「え?大丈夫?
アップライトのピアノだって安い買い物じゃないよ」
「大丈夫です。
それくらいは買えます」
…多分、中位のランクで80万くらいかな…。
以前、楽器屋を覗いた時になんとなくそんな値段だった記憶がある。
確かに主婦が買うにはかなりな買い物だ。
けれど菫も曲がりなりにも仕事をしているし、一応貯金もある。
優しい亮一は多分
『スミちゃん、ピアノなら俺が買ってやるよ』
と、言うんだろうけれど…。
でも、自分で買うのだ。
自分のためのピアノを買うなんてわくわくする。
いいじゃない?
弾けるよ。大丈夫」
とても優しい声だった。
胸がじんわり温まる…そんな声だった。
「本当ですか?」
「大丈夫。僕が弾けるようにしてあげる。
お隣さんのよしみでとびきり親切に優しく…ね」
その美しい琥珀色の瞳が菫を覗き込む。
「あ、ありがとうございます」
…やっぱりドキドキする。
「週何回レッスンにする?」
「…普通は何回ですか?」
「さあねえ…。
週1から…まあ音大受験とか専門的にやるならほぼ毎日だったけど…」
菫は躊躇いながら口を開く。
「…あのう…。
私、主人が3ヶ月後に帰国するんです。
それで内緒で愛の挨拶をマスターして、帰国したら聴かせたいんです。
主人をびっくりさせたくて…。
…でも、3ヶ月じゃあ厳しいですよね?」
『わあ!スミちゃん!すげえじゃん!上手いじゃん!
いつのまにこんな曲弾けるようになったの?』
亮一の驚く顔が見たい。
それは本当だった。
菫に意外な特技があることでびっくりさせたい。
菫を見る目が変わったりしたら、ちょっと嬉しい。
染布の白い貌が楽しげに輝く。
「へえ。それ、いいじゃん。
ミレイは良い奥さんなんだね」
無邪気に褒める染布に、少しだけがっかりする。
…そりゃ、そうよね。
当然の反応よね…。
何か期待する方がおかしいのだ。
「3ヶ月ね。
楽譜を少し易しくアレンジすれば無理じゃない。
その代わり、毎日練習してね。
まずは指がピアノに慣れることが大切だから。
右手と左手の練習をばらばらに。
教本貸してあげる」
「ありがとうございます!
はい。頑張ります!」
…あとは…
「ピアノはある?」
菫は首を振る。
実家にはあるが、ここにはない。
「ないので、買います」
染布がやや心配そうに綺麗な眉を寄せる。
「え?大丈夫?
アップライトのピアノだって安い買い物じゃないよ」
「大丈夫です。
それくらいは買えます」
…多分、中位のランクで80万くらいかな…。
以前、楽器屋を覗いた時になんとなくそんな値段だった記憶がある。
確かに主婦が買うにはかなりな買い物だ。
けれど菫も曲がりなりにも仕事をしているし、一応貯金もある。
優しい亮一は多分
『スミちゃん、ピアノなら俺が買ってやるよ』
と、言うんだろうけれど…。
でも、自分で買うのだ。
自分のためのピアノを買うなんてわくわくする。