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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
気がつくと、飴色のアンティークの柱時計が8時を差していた。

慌てて暇乞いをしようとした刹那…

「もう8時かあ。
あ〜あ。お腹すいたなあ〜」
染布がその人形のように美しい容姿に似合わぬ、現実的なぼやきを漏らした。

「…あの…お食事は…」
「今日は朝パン齧っただけ。
めんどくさくてさ」
肩を竦めて見せる。

「自炊ですか?」
「家政婦さんいたんだけど、なんか他人が家に居るのがウザくて辞めさせちゃった。
兄さんには怒られたけど。
かと言って自炊も嫌いだから、テキトーに食べたり食べなかったり」

「駄目ですよ、そんな。
身体に良くないです」
「仕方ないじゃん。めんどくさいんだもん」
…意外に子どもっぽい。
あ、まだ21歳か。
無理もない。

「あ〜、キンパ食べたいなあ〜」
ピアノから立ち上がりながら伸びをする。

「キンパ?
あの…韓国の海苔巻き…ですか?」
「そ!僕、キンパ大好きなの」
染布の琥珀色の瞳が無邪気に輝いた。
「韓国のおばあちゃんがよく作ってくれたんだ。
だから今でも大好物。
…仕方ない。Uberで我慢するか。
この辺、あんま美味しい店ないんだけどね」

スマホを取り出した染布に、遠慮勝ちに声を掛ける。
「…あのう…私、作りましょうか?」

染布の瞳が見開かれる。
「え?ミレイ、作れんの?」

「ええ…。
前に韓国料理のお料理教室に通ったことがあって…」
…韓国ドラマにどハマりした友人に連れられて、1か月通ったことがあるのだ。
なかなか楽しい経験だった。

「食べたい!作って!今すぐ!」
染布が子どものようにぴょんぴょん跳ねた。

「わ、分かりました。
でも、有り合わせの材料になっちゃいますけど…いいですか?」
「うん!構わない!
あ、でもカニカマと甘い卵焼きとほうれん草は入れてね」

…冷蔵庫の中を思い起こす。
「多分…あると思います。
…じゃあ、30分後くらいにまた来ますね」

染布が眼を丸くする。
「そんなに早く出来るの?
ミレイ天才じゃん!」

…そうして…

「ありがと!楽しみにしてる!」
染布は親しい姉にするように元気にハグをしたのだ…。

「…あ」

…薔薇の薫り…。
名も知らぬ、綺麗な綺麗な薔薇の薫りに包まれる。

「…じ、じゃあ、少し待っていてください…」

頬を染めながら、菫は音楽室を駆け出した。




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