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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「…僕が13歳になった時、兄さん…つまり、父さんの奥さんとの子どもね…が済州島にやって来た。
僕を引き取るつもりでね。
…父さんは…その半年前に亡くなっていたらしい。
持病の心臓発作だって。
父さんは亡くなる前に僕の存在を兄さんに打ち明けて僕を託したんだ。
韓国にお前の腹違いの弟がいる。
母親は亡くなっている。
私にもしものことがあったらその子を引き取ってやってくれ…てね。
僕はいきなり兄と名乗る人が現れてすっごく混乱してさ。
絶対日本になんか行かない。
知らない人となんかと暮らさないって大騒ぎしたんだ。
…そしたらおばあちゃんが…。
今まで見たことがないほど厳しい顔をして僕を兄さんに押しやった。
『あんたはこの人のところへ行くんだ。
あんたはこの人の弟なんだから。
日本で暮らしなさい。
ここにいたって、あたしは何もしてやれない。
あんたに満足な教育も受けさせてやれない。
あんたのオンマはそんなこときっと望んじゃいなかった』
…それから兄さんに深々と頭を下げた。
『染布をどうかよろしくお願いいたします。
本当の弟と思って可愛がってやってください。
…この子はピアノが好きです。
母親の遺品のピアノを独学で一日中弾いてる子です。
どうか染布にピアノを習わせてやってください。
私の命よりも大切な孫を、どうか、どうか大切にしてやってください』
そう言って泣いたんだ」
僕を引き取るつもりでね。
…父さんは…その半年前に亡くなっていたらしい。
持病の心臓発作だって。
父さんは亡くなる前に僕の存在を兄さんに打ち明けて僕を託したんだ。
韓国にお前の腹違いの弟がいる。
母親は亡くなっている。
私にもしものことがあったらその子を引き取ってやってくれ…てね。
僕はいきなり兄と名乗る人が現れてすっごく混乱してさ。
絶対日本になんか行かない。
知らない人となんかと暮らさないって大騒ぎしたんだ。
…そしたらおばあちゃんが…。
今まで見たことがないほど厳しい顔をして僕を兄さんに押しやった。
『あんたはこの人のところへ行くんだ。
あんたはこの人の弟なんだから。
日本で暮らしなさい。
ここにいたって、あたしは何もしてやれない。
あんたに満足な教育も受けさせてやれない。
あんたのオンマはそんなこときっと望んじゃいなかった』
…それから兄さんに深々と頭を下げた。
『染布をどうかよろしくお願いいたします。
本当の弟と思って可愛がってやってください。
…この子はピアノが好きです。
母親の遺品のピアノを独学で一日中弾いてる子です。
どうか染布にピアノを習わせてやってください。
私の命よりも大切な孫を、どうか、どうか大切にしてやってください』
そう言って泣いたんだ」