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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「おばあちゃんは…今も済州島で細々と民宿を営みながら暮らしている。
僕が東京芸大に入学したのをすっごく喜んでくれ…」
染布は菫の様子に気づき、ぎょっとした。
「ちょ…ミレイ、どうしたの?」
…菫が両手に顔を埋め、おいおいと号泣していたからだ。
「…だ…だって…その…おば…おばあちゃまの…お気持ちを考えたら…切なくて…泣けてきちゃって…」
「…ミレイ…」
「…わた…私のおばあちゃん…思い出しちゃって…。
…私のおばあちゃんも…染布先生のおばあちゃまみたいに優しくて…」
…小さな頃から菫のことを誰よりも可愛がり、心配してくれていた。
教師になり、モンペア騒動で休職し、メンタルを病みかけた時、祖母は近所の神社にお百度参りをして菫の健康と幸せを祈っていたのだと、のちに母から聞かされた。
『菫ちゃんの幸せのためならおばあちゃん今死んだって構わないわ』
にこにこ笑顔でそう励ましてくれた…。
「…亡くなったの?」
「いえ、ピンピンしてます」
染布は吹き出した。
「なんだ。
…なんだってこともないけどさ」
「…はい…。
…ですよね」
菫も釣られて吹き出した。
染布が菫の貌を覗き込む。
「泣き虫なの?ミレイ」
「そ、そんなことはないと思います」
琥珀色の美しい瞳が優しく菫を見つめる。
「…笑った方が可愛いよ」
…でも…
「ありがとう、ミレイ」
…ああ、まただわ…。
この美しい宝石みたいな瞳に、閉じ込められそうになる…。
まるで、お伽話の世界みたいに…
…どうしよう…
菫はまた泣きたくなる。
それは、甘美な涙だ。
…私…
…と、不意に低く無機質な声が響いた。
「…染布。
そのひとは誰だ」
菫は振り返り、思わず息を呑んだ。
僕が東京芸大に入学したのをすっごく喜んでくれ…」
染布は菫の様子に気づき、ぎょっとした。
「ちょ…ミレイ、どうしたの?」
…菫が両手に顔を埋め、おいおいと号泣していたからだ。
「…だ…だって…その…おば…おばあちゃまの…お気持ちを考えたら…切なくて…泣けてきちゃって…」
「…ミレイ…」
「…わた…私のおばあちゃん…思い出しちゃって…。
…私のおばあちゃんも…染布先生のおばあちゃまみたいに優しくて…」
…小さな頃から菫のことを誰よりも可愛がり、心配してくれていた。
教師になり、モンペア騒動で休職し、メンタルを病みかけた時、祖母は近所の神社にお百度参りをして菫の健康と幸せを祈っていたのだと、のちに母から聞かされた。
『菫ちゃんの幸せのためならおばあちゃん今死んだって構わないわ』
にこにこ笑顔でそう励ましてくれた…。
「…亡くなったの?」
「いえ、ピンピンしてます」
染布は吹き出した。
「なんだ。
…なんだってこともないけどさ」
「…はい…。
…ですよね」
菫も釣られて吹き出した。
染布が菫の貌を覗き込む。
「泣き虫なの?ミレイ」
「そ、そんなことはないと思います」
琥珀色の美しい瞳が優しく菫を見つめる。
「…笑った方が可愛いよ」
…でも…
「ありがとう、ミレイ」
…ああ、まただわ…。
この美しい宝石みたいな瞳に、閉じ込められそうになる…。
まるで、お伽話の世界みたいに…
…どうしよう…
菫はまた泣きたくなる。
それは、甘美な涙だ。
…私…
…と、不意に低く無機質な声が響いた。
「…染布。
そのひとは誰だ」
菫は振り返り、思わず息を呑んだ。