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ヒヤシンスの恋
第1章 菫のため息
「じゃあさ、ゆっきーたちと旅行したら?」
揚げたてのかき揚げを頬張りながら、亮一は提案した。
さすがに転勤したて、引っ越したばかりで3ヶ月の海外出張は気が咎めてきたらしい。

「ゆっきー今、ソウル。春から海外駐在だって。
ショップマネージャーとして。
…しおりんはおめでた。まだ安定期入ってないから旅行は無理」
茄子の天ぷらを箸でぐさぐさ刺し…行儀の悪さにすぐに反省し、静かに口に運ぶ。

「ソウルかあ…。
ゆっきーやるなあ。さすがは首席で卒業した才女だな。
しおりんはこれで旦那の実家に面目立ったな。
嫁ぎ先旧家だもんな。跡継ぎ跡継ぎ…てノイローゼになりそう…てボヤいてたもんなあ」

亮一と菫は同じ大学出身だ。
ゼミの先輩後輩の仲なので菫の交友関係に詳しい。
菫の友人は亮一の友人でもある。
だから悪気は全くないのは分かっている。
亮一の言葉にいちいち引っかかるのは私が僻みっぽいからだ…と、菫は自己嫌悪に陥いる。

菫には華々しい仕事のキャリアも特にないし、平々凡々な主婦だ。
結婚5年目。
32歳。
子どもは欲しいのになかなか授からない。
不妊治療専門クリニックに相談に行ったが、特に問題なしと言われた。
亮一は
『焦ることないよ。俺はスミちゃんと2人の生活で全然満足してるしさ。ゆったり構えてたらそのうちコウノトリが運んできてくれるさ』
と、呑気なものだ。

菫は今は在宅で小学生の通信学習の添削指導をしている。
元々、中学の国語教師をしていたがモンペアに悩まされ、メンタルを壊しかけた。
交際していた亮一が見かねて
『そんな辛い思いをしてまで仕事することないよ。
さっさと辞めて俺の嫁さんになれよ』
とプロポーズしてくれた。
渡りに船とばかりにたった5年足らずで退職してしまった自分を、菫はいまだに引け目に思っている。

親友のゆっきーこと嶋田有紀子は、韓国で今1番人気の香水ブランドの初の日本人マネージャーだ。
この間はファッション雑誌にインタビュー記事が載った。
韓国女優のようなメイクをした有紀子は華やかで如何にも成功者といった煌めかしいオーラを放っていた。

しおりんこと宮野栞里は関西の名家に嫁ぎ、苦労はしているようだが、ご寮さんと崇められ、着実に女主人の役割を果たしている。

…それに比べて…
菫はため息を吐く。

…私は…何をしているんだろう。




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