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ヒヤシンスの恋
第1章 菫のため息
菫は目の前の夫をぼんやり見つめる。
TVのサッカー中継をビール片手に一喜一憂している34歳のごく普通のサラリーマン、そして夫…。
けれど、長身の部類に入るスタイル。
見た目も男前だ。
大学時代は『松下洸平に似ている先輩』と後輩ゼミ生の中ではなかなかの人気者だった。
中学生まで父親の仕事の関係でボストンに住んでいたので語学は達者。
勤務先の会社は大手家具メーカー。
そこでマーケティングの部署にいる。
大学までテニスを続けていた亮一はスポーツマンらしく闊達で明朗、礼儀正しい。
そのため、上司や先輩にも好かれ、人望も厚い。
今回の海外出張抜擢も亮一の仕事ぶり、聡明さ、コミュ力、人柄…それら全ての高い評価ゆえ…なのだろう。
菫の夫は客観的に見てもかなりスペックの高い人物なのだ。
亮一は菫に優しい。
出会った時から誠実で、浮気ひとつしたことはない。
『俺はずっとスミちゃん一筋だからさ。
スミちゃん以外結婚相手は考えられない。
だから俺の嫁さんになってくれないかな』
…そう言ってプロポーズしてくれたけれど、あれは仕事に行き詰まった菫を救うためだったのではないか。
不憫さからのプロポーズだったのではないか。
…何者でもなく、何も成し遂げていない、しかも仕事に傷つけられた自分を哀れに思って結婚してくれたのではないか…。
もっと言えば、そんな菫を妻にすれば一生自分に感謝し従順に従うだろう。
そう思ったから、菫と結婚したのではないか。
…そんなふうに穿った見方をしてしまうほど、菫は自分に自信がないのだった。
TVのサッカー中継をビール片手に一喜一憂している34歳のごく普通のサラリーマン、そして夫…。
けれど、長身の部類に入るスタイル。
見た目も男前だ。
大学時代は『松下洸平に似ている先輩』と後輩ゼミ生の中ではなかなかの人気者だった。
中学生まで父親の仕事の関係でボストンに住んでいたので語学は達者。
勤務先の会社は大手家具メーカー。
そこでマーケティングの部署にいる。
大学までテニスを続けていた亮一はスポーツマンらしく闊達で明朗、礼儀正しい。
そのため、上司や先輩にも好かれ、人望も厚い。
今回の海外出張抜擢も亮一の仕事ぶり、聡明さ、コミュ力、人柄…それら全ての高い評価ゆえ…なのだろう。
菫の夫は客観的に見てもかなりスペックの高い人物なのだ。
亮一は菫に優しい。
出会った時から誠実で、浮気ひとつしたことはない。
『俺はずっとスミちゃん一筋だからさ。
スミちゃん以外結婚相手は考えられない。
だから俺の嫁さんになってくれないかな』
…そう言ってプロポーズしてくれたけれど、あれは仕事に行き詰まった菫を救うためだったのではないか。
不憫さからのプロポーズだったのではないか。
…何者でもなく、何も成し遂げていない、しかも仕事に傷つけられた自分を哀れに思って結婚してくれたのではないか…。
もっと言えば、そんな菫を妻にすれば一生自分に感謝し従順に従うだろう。
そう思ったから、菫と結婚したのではないか。
…そんなふうに穿った見方をしてしまうほど、菫は自分に自信がないのだった。