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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
「ね、兄さんも食べない?
ミレイの作ったキンパ。
めちゃくちゃ美味しいんだよ!」
染布が兄、尊文の腕を引きテーブル前に連れてゆく。
尊文が端正な眉を上げる。
「キンパ?
…羽村さんが作ってくださったのですか?」
「は、はい…」
「僕がキンパ食べたいな…て言ったら作ってくれたの。
あっという間に。
すっごい美味しいよ」
「そんな…有り合わせですから…。
でも、よろしければお口汚しに…」
慌てて説明しながらも、遠慮勝ちに勧める。
…何しろ3本分のキンパだ。
まだまだたっぷり残っている。
本当に冷蔵庫の中にあるものだけで作ったので、まさにザ・家庭料理なのだが…。
「…そうですか…。
では、遠慮なく」
…意外なことに、尊文はそう言うと、染布の向かい側にしなやかに座った。
菫は取り皿にキンパをいくつかよそい、箸を添えた。
「…お口に合うか分かりませんけれど…」
…染布の兄というこのひとは、若いのに大層気難しそうに見える。
財産家の御曹司だから口も肥えていることだろう。
菫はどきどきしながら、青年がキンパを口に運ぶのを見守った。
「…美味しい…!」
尊文の口からぼそりと素朴な賛美の声が漏れた。
「でしょう?美味しいよね?兄さん!
おばあちゃんのキンパにも負けてないよ、ミレイ」
「…良かったあ…!
緊張しました!」
菫は胸を撫で下ろす。
「兄さんは美食家なんだ。
その兄さんが褒めるんだから本物だよ」
「でも、本当に有り合わせの材料だから…なんだか恥ずかしいわ」
照れている菫を尊文はまじまじと見つめると、淡々と告げた。
「…羽村さん。おりいってお願いがあります」
「は、はい。何でしょう」
緊張しながら居住まいを正す菫に、尊文は感情の読めない無機質な声で続けた。
「…弟の家政婦をやっていただけませんか?」
ミレイの作ったキンパ。
めちゃくちゃ美味しいんだよ!」
染布が兄、尊文の腕を引きテーブル前に連れてゆく。
尊文が端正な眉を上げる。
「キンパ?
…羽村さんが作ってくださったのですか?」
「は、はい…」
「僕がキンパ食べたいな…て言ったら作ってくれたの。
あっという間に。
すっごい美味しいよ」
「そんな…有り合わせですから…。
でも、よろしければお口汚しに…」
慌てて説明しながらも、遠慮勝ちに勧める。
…何しろ3本分のキンパだ。
まだまだたっぷり残っている。
本当に冷蔵庫の中にあるものだけで作ったので、まさにザ・家庭料理なのだが…。
「…そうですか…。
では、遠慮なく」
…意外なことに、尊文はそう言うと、染布の向かい側にしなやかに座った。
菫は取り皿にキンパをいくつかよそい、箸を添えた。
「…お口に合うか分かりませんけれど…」
…染布の兄というこのひとは、若いのに大層気難しそうに見える。
財産家の御曹司だから口も肥えていることだろう。
菫はどきどきしながら、青年がキンパを口に運ぶのを見守った。
「…美味しい…!」
尊文の口からぼそりと素朴な賛美の声が漏れた。
「でしょう?美味しいよね?兄さん!
おばあちゃんのキンパにも負けてないよ、ミレイ」
「…良かったあ…!
緊張しました!」
菫は胸を撫で下ろす。
「兄さんは美食家なんだ。
その兄さんが褒めるんだから本物だよ」
「でも、本当に有り合わせの材料だから…なんだか恥ずかしいわ」
照れている菫を尊文はまじまじと見つめると、淡々と告げた。
「…羽村さん。おりいってお願いがあります」
「は、はい。何でしょう」
緊張しながら居住まいを正す菫に、尊文は感情の読めない無機質な声で続けた。
「…弟の家政婦をやっていただけませんか?」