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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
一日中ぼんやりと隣家の庭の奥を見つめながら考える。
夢のように端麗な美貌を思い浮かべて…。
…染布先生、今何してるのかな…て。

「それが恋でなくてなんなのよ」
画面の向こう側から少し酔ったような有紀子の声が飛ぶ。

「…一日中、彼のことを考えてため息ついたり、うっとりしたり…。
綿菓子みたいなふわふわした気持ちで眠りに就いたり…。
…甘酸っぱいわあ…」

…懐かしいな…。
ぽつんと響いたのははっとするような寂しげな声だ。

「…ゆっきー。
貴女こそ恋愛真っ最中じゃない」
不倫とは言え、二人は熱愛中の筈だ。
相手はハーバード大卒の超エリートでしかも男前。
普段クールな有紀子を夢中にさせたのだから…。

「…私は…そんな時期とっくに通り過ぎたよ」
物憂げに長い髪を搔き上げ、薄い口唇の端で笑ってみせた。

「…恋なんて、片想いの時期が一番楽しいのよ…」

独り言のようなその言葉が、いつまでも耳に残ったのだ…。

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