この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
zoomを終え、パソコンの画面をオフにする。
暗くなった画面を菫はぼんやりと見つめる。
…有紀子に言わなかったことがひとつある。
あの夜、帰る菫を兄の尊文が家まで送ると言って、薔薇園のプロムナードの石畳みを先導して歩き始めた。
月明かりが、煌々と青年の端正な後ろ姿を照らし出す。
…随分、背が高いひとだ。
菫はすらりとした後ろ姿を見上げる。
仕立ての良いスーツは、おそらくオーダーメイド品だろう。
均整の取れた体躯に沿うように仕立てられているのが分かる。
…仄かなグリーン系の薫りは、外国製のトワレだ。
…不動産と…あと何を経営しているのかしら…。
私より何歳も若いのに…。
感心するような、羨ましいような…少しコンプレックスのような複雑な気持ちを抱く。
…裏木戸を通り抜け、菫の家の敷地内に着いた刹那、青年は振り返る。
彫像のように整った貌が、菫を冷たく見下ろしていた。
…その言葉は、唐突とも言えるものだった。
『染布を好きにならないで下さい』
暗くなった画面を菫はぼんやりと見つめる。
…有紀子に言わなかったことがひとつある。
あの夜、帰る菫を兄の尊文が家まで送ると言って、薔薇園のプロムナードの石畳みを先導して歩き始めた。
月明かりが、煌々と青年の端正な後ろ姿を照らし出す。
…随分、背が高いひとだ。
菫はすらりとした後ろ姿を見上げる。
仕立ての良いスーツは、おそらくオーダーメイド品だろう。
均整の取れた体躯に沿うように仕立てられているのが分かる。
…仄かなグリーン系の薫りは、外国製のトワレだ。
…不動産と…あと何を経営しているのかしら…。
私より何歳も若いのに…。
感心するような、羨ましいような…少しコンプレックスのような複雑な気持ちを抱く。
…裏木戸を通り抜け、菫の家の敷地内に着いた刹那、青年は振り返る。
彫像のように整った貌が、菫を冷たく見下ろしていた。
…その言葉は、唐突とも言えるものだった。
『染布を好きにならないで下さい』