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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密
『え?』
あまりにも唐突な言葉で、聞き間違いかと思った。
『染布を好きにならないで下さい。
弟は美しいでしょう?
人の心を掻き乱さずにはいられないくらいに。
ですから、貴女が弟に惹かれる前に予防線を張らせていただきました』
染布には少しも似てはいないが、AIのように端正で感情が読めない表情で、そう言ってのけたのだ。
さすがの菫も憤慨する。
『…ちょっと…。
失礼じゃないですか?
私、結婚しているんですよ。
夫が居るのに、他の男性を好きになる訳、ないじゃないですか』
『…さあ、それはどうかな。
今時、既婚者だろうと何だろうと不倫をするのは当たり前なのではないですか?
…私は軽蔑しますが』
薄い唇の片方を跳ね上げる。
菫も思わずむきになる。
『私は不倫なんてしたこともありませんし、するつもりもありません!絶対に!』
『それは良かった』
尊文は初めて微かに笑った。
そうして、改めて菫に向き直ると、大切な秘密を打ち明けるように静かに告げた。
『…弟は今、大変傷ついているのです。
きっともう、恋をするつもりもないでしょう。
…けれど、突発的に何をするか分からないのも事実です。
ですから、貴女には染布が危険なことをしないよう、見張っていただきたいのです』
『見張り?
…そんな…一体、何が…』
『それは私の口からは言えません。
貴女が染布の口から聞き出せると良いですね』
…そんなことは到底出来ないでしょうが…。
そう言いたげに、その美しくも冷ややかな男は端正な瞳を細めて見せたのだ。
あまりにも唐突な言葉で、聞き間違いかと思った。
『染布を好きにならないで下さい。
弟は美しいでしょう?
人の心を掻き乱さずにはいられないくらいに。
ですから、貴女が弟に惹かれる前に予防線を張らせていただきました』
染布には少しも似てはいないが、AIのように端正で感情が読めない表情で、そう言ってのけたのだ。
さすがの菫も憤慨する。
『…ちょっと…。
失礼じゃないですか?
私、結婚しているんですよ。
夫が居るのに、他の男性を好きになる訳、ないじゃないですか』
『…さあ、それはどうかな。
今時、既婚者だろうと何だろうと不倫をするのは当たり前なのではないですか?
…私は軽蔑しますが』
薄い唇の片方を跳ね上げる。
菫も思わずむきになる。
『私は不倫なんてしたこともありませんし、するつもりもありません!絶対に!』
『それは良かった』
尊文は初めて微かに笑った。
そうして、改めて菫に向き直ると、大切な秘密を打ち明けるように静かに告げた。
『…弟は今、大変傷ついているのです。
きっともう、恋をするつもりもないでしょう。
…けれど、突発的に何をするか分からないのも事実です。
ですから、貴女には染布が危険なことをしないよう、見張っていただきたいのです』
『見張り?
…そんな…一体、何が…』
『それは私の口からは言えません。
貴女が染布の口から聞き出せると良いですね』
…そんなことは到底出来ないでしょうが…。
そう言いたげに、その美しくも冷ややかな男は端正な瞳を細めて見せたのだ。